- 工藤耕太郎
フレイルの危険因子と対策
8月の上野原市の市報に掲載された私の記事を転載いたします。 フレイルは、偏った食事、運動不足、疼痛、難聴、抑うつ、認知機能障害などで生じやすくなります。また、服用している薬が6剤以上の場合、フレイルになりやすいとされています。
低タンパクの食事はフレイルの危険因子です。したがって肉や魚や大豆などを食べることは重要です。血糖値やコレステロール値は高すぎてもフレイルの危険因子となりますが、気を付けなければならないのは低血糖や低コレステロールもフレイルの危険因子となるため、糖尿病や高脂血しょうの治療を行なっている場合、その点も注意する必要があります。。
運動については1週間に1000kcal以上の運動を行なっている場合、フレイルの危険は減少することが知られています。また運動していない時間の過ごし方も重要で、読書やインターネット、音楽鑑賞などはテレビを見ているよりもフレイルが引き起こされるリスクが減少します。つまり運動不足でテレビを長時間視るという生活習慣がフレイルを引き起こしやすいと考えられています。
疼痛や難聴は運動量を減少させやすくフレイルにつながる可能性が示唆されています。
フレイルへの介入は認知機能障害や認知症を改善する可能性が示唆されていますが、認知症の発症予防に関しては効果があるという報告はありません。10週間の運動介入で空間認知、遂行機能、処理速度、作業記憶などが改善するという報告があり、認知機能障害や認知症の患者さんに対して積極的な運動介入を行うことは必要であると考えられています。
抑うつ状態はフレイルの危険因子であると同時に、フレイルによって抑うつ状態はさらに悪化します。したがって、抑うつ状態は運動介入と心理療法の対象となります。
病院にかかる上で、もっとも注意しなければならないことは薬剤の数であす。6剤または7剤以上の処方を服用している人は薬剤起因性老年症候群という薬の副作用により行動量が減少する危険が高くなります。特に危険な薬剤はベンゾジアゼピン(抗不安薬や睡眠導入剤)、非ベンゾジアゼピン系鎮静薬(最近の睡眠導入剤に多い)、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗コリン作用を持つ薬剤とされています。これらの薬は専門医が判断し必要に応じて処方されていることが殆どですので、むやみに怖がる必要はありません。しかし処方された場合、患者さんやご家族は運動能力の低下が薬剤の服用以降に起きていないか注意が必要と考えられています。
当院では院内で作業療法士、栄養士、心理士、看護師を中心としたフレイル対策チームが毎週回診をしており、入院患者さんに対しては積極的に介入をしています。今後は外来にも拡充していくことを検討しています。